8時30分、高千穂ほど厳しくはないものの
長崎近郊も寒い朝を迎えました
午前は大浦天主堂、浦上天主堂、孔子廟をめぐり
その後、長崎から大宰府に向け出発しました

大宰府でのえいじさんとの待ち合わせに
2時間程度の余裕があったため
ラストチャンスでみかんの産地である
多良見町に向けて高速道路を途中下車しました
車のすれ違いがやっとの
幅1.5車線程度の国道を
奥へ奥へと走るのですが
木の根元に転がるみかんに
温州みかんの季節が終わろうとしているのが
残念ながら目にはっきりと写ります
直売所が見えます
しかし、大晦日なのか季節外れなのか
誰一人いません
あきらめ、太宰府に向けて道を引き返し
国道を外れ小さな集落の中を走っていたとき
高齢のご婦人が2人
1人は車の中から窓を開け、もう1人は立ったまま
道路のど真ん中で話し込んでいます
のどかな農漁村風景です
これが本当のラストチャンスでした
「みかんを食べに来ました
どこかに直売所などはありますでしょうか」
2人は数秒、顔を見合わせ
そして、立っているおばあちゃんが振り向き
おばあちゃん「うちにおいで、あげるから」
わたしのびっくりした丸い目をのぞき込み
おばあちゃん「うち、みかん農家だから」

ほんのりと潮風の香る坂の途中にある
おばあちゃんの家
玄関先から見える大村湾の景色を
やや緊張しながら眺めます
やがて、長かったか短かったか
おばあちゃんが倉庫の奥から
出荷用と思われる大きな箱を3つ運んできて
おもむろに玄関先に座ると
箱の中のみかんを1個ずつ確認し
「全部持って行きな」と言うのです

「このみかんは良い色をしているから美味しい」
「これ味見してごらん」
「北海道旅行は楽しかったなぁ」
時折、雲の合間から暖かい日差しが降り注ぐ中
会話と時間はゆっくりと流れていきます
最後に「伊木力みかんは潮風にあたるから
ほかのみかんに負けずに美味しい」
その声には力強さを感じさせます
80歳とのこと
ずっと元気にすごしてほしいものです
両手がしびれるほどの重さになった
20キロを超えるみかんを抱えながらも
潮風香る丘を軽やかに下りて行くその姿は
誰からの目にも楽しそうに見えたことでしょう
出会いに感謝 |