21.津波にどう抗うか〜その3 3月3日記事

防潮堤や避難道路の整備などの防災ハードでは限界がある中、
地元新聞では「津波てんでんこ」という言葉を見かけます。
「てんでんばらばらに、他人に構わず逃げろ」という意味で、
「自分のことは自分で守る」という考え方に基づくものです。

災害弱者を目の前にした時「てんでんこ」を実行できるか。
一見、とても冷酷に感じるのですが、
これは、明治と昭和の2つの三陸地震の津波襲来を契機として、
地域に伝えられてきた教え・教訓であり、
一家全滅などを防ぐための言い伝えでもあったそうです。

地震直後に学校に子どもを引き取りに行った親が多く、
結果、親子とも津波から逃げ遅れる悲惨な出来事がありました。
その一方、避難完了後の避難先での引き渡しを徹底した学校で、
人的被害が生じなかった事例が注目されています。
「親は親、子は子で、まずは安全な高台に避難する」

つまり、これが上手く機能するためには、
第1に、地域の信頼関係が構築されていること。
第2には、学校や施設などの対応に問題があったために、
多大な犠牲を生じさせた事例もあることから、
緻密な避難計画などの防災対策の策定が必要なのです。
しかしながら、これらの構築・策定は極めて難しいことです。


多くの児童が犠牲になった石巻市立大川小学校の教室

2月下旬、大槌町のNPOの紹介で、
震災を後世に伝える「震災の語り部」さんらと交流をしました。

語り部のひとりである赤崎さんは、
「『てんでんこ』と災害弱者の救護は一瞬の決断」と言います。
震災当日、自身も高齢者である赤崎さんは
同じ町内会の寝たきり高齢者を
避難所である寺院まで引きずりながら避難させたと言います。
これを迷わず決断するには、普段からの地域事情の把握のほか、
地域での信頼関係の構築が大切だと言います。


震災当時の状況と現在の復興状況を説明する赤崎さん

しかし、集落でさらなる高齢化が進展し限界集落となれば、
「てんでんこ」は機能せず、集落壊滅の惨事も想定されます。
現代の高齢化社会に対応した変化が
「てんでんこ」にも求められているのです。

大槌編(後編1) 
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